2019年09月20日

見ること知ること

皆さんには心に残った景色はありますか?
滅多に見られない絶景だったり、やっと目にすることが出来たと待ち望んでいた光景だったり。
人によって様々だと思います。
私が忘れられない景色はそれはもうたくさんありますが、印象的だった光景があります。
それは、甲府の平和通りを行き交う人の姿です。

大学生の頃、当時のバイト先までの道のりを歩いていると、ふとカツカツという音が聞こえてきました。
顔を上げると、私の前を男性が歩いていました。手には白い杖。
彼は点字ブロックの上を、白い杖で周囲の安全を確かめながら歩いていました。
真っ直ぐ前を向いて。
見渡すと、スマホや足元を見ながら周りなんて気にせず歩く人々。
ただ一人、その男性だけが前を向いて歩いていました。

視覚障碍者の彼は、周りの景色が見られなくて、それでもピンと背筋を伸ばして堂々としていて。
その姿を格好いいと思うと共に、自分が恥ずかしくなりました。
視覚に障害があると、他の感覚が研ぎ澄まされるといいます。
彼はきっと足音や雰囲気から、周りの人が下を向きながら歩いていることに気付いているんだろうな、と思いました。
せっかく目が見えるのに。
そこから私は見ようとしていたスマホをしまって、彼に倣って真っ直ぐ前を向いて歩きました。
意識してみると、見慣れた道のりの中でたくさんの情報が入って来ます。
あったけど無くなったもの。
無かったけど出来たもの。
いつもと同じようで違う景色でした。

甲府はかつては城下町。

旧城下町エリアには、こういった看板が点在しています。
これも、下を向いていたら気付けなかったこと。

甲府は今年、開府500年の節目を迎えています。
ゆっくり歩いて、過去の甲府・今の甲府を感じる良い機会なのかもしれません。
せっかく見るという才能を得られたのだから、下を向いていたら勿体ないですしね。

ozawa