2025年04月01日

桜と和菓子

世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし

世の中に桜がまったくなければ春の人の心はのどかだっただろうに。
いつ咲くのか待ち遠しく、
咲いたかと思えば、いつ散ってしまうのか穏やかでない。
日本人が抱く桜の印象がよく表れているこの和歌を詠んだのは、在原業平。
『伊勢物語』のモデルとなった歌人です。

儚いからこそ美しい。
食べるとはらり、なくなってしまう和菓子も、
古くよりわれわれの心を掻き乱す桜にどことなく似ています。

今回は、行楽にもってこい。
うららかな春のお菓子をご紹介します。

・桜餅 貝合せ
風味豊かな桜の葉と、可愛らしい桜の花を添えた桜餅です。

・道明寺桜餅
道明寺粉でこし餡を包んで桜の葉を巻いた、もちもち食感の桜餅です。

・長命寺焼き桜
薄く焼き上げた小麦生地でこし餡を包み、桜の葉を巻きました。

・桜まんじゅう
刻んだ桜の葉を入れた、ほんのりピンク色の餡が春らしい小麦生地のお饅頭です。

・桜きんつば
刻んだ桜の葉の塩漬け入り桜餡に薄くのばした小麦生地をつけしっとり焼き上げました。

・花見団子
桜色、緑色、白色の三色のお団子。それぞれ桜餡、つぶし餡、こし餡を包んでいます。

・よもぎ草餅 貝合せ
よもぎの風味が春の息吹を感じる、つぶし餡の草餅です。

・よもぎまんじゅう
よもぎ入りのしっとりとした生地に、たっぷりのつぶし餡を閉じ込めました。

・きみしぐれ
春を感じる色合い、口の中でほろほろと優しい甘さが広がります。

甲斐源氏発祥の地。
そういわれる平塩の丘に、母校の小学校は位置します。

通学路にしていた宝寿院というお寺は、枝垂桜の名所です。
満開の下、出会いと別れをけんけんぱーして、
無邪気に駆けていったものでした。

悲しいことがあると、家とは逆方向に歩きました。
丘の上で、甲府盆地を一望できる農道にさしかかります。
毎日の人の営みがぴかぴか光り、粒の集いが夜景になる。
それはそれは綺麗なのです。

花は散り。されど実がなる、種ができる。
めくるめく季節のわだかまりもろとも引き受け、また次の年に花は開く。
桜には、そういった未来を見据える逞しさもあるのではないでしょうか。
きっと時代の風に吹かれようと和の心をつないできた和菓子にも。

我慢をいくどとなくやり過ごし、再び盛りはじめたお花見。
たとえさみしさが下地にあったとしても、
賑やかにすることで、明日を獲得していく強さを噛みしめながら、
みんなで花も団子も楽しみたいです。

おさだ