2025年02月14日

どら焼きとバレンタイン

日本人はお祭り好きが多いといいます。
クリスマスの夜に立ち寄ったスーパーマーケットでは、
サンタクロースの格好をした店員さんが、もうおせちの品出しにいそしんでいました。

桔梗屋に入社してしばらくは、
桔梗信玄餅工場テーマパークで開催する「初詣縁日」の準備に明け暮れていました。
まるで学園祭のよう。
ひねもす膨らませた水風船は、口を押えたままにするのが存外むずかしく、
普段使わない筋肉が悲鳴を上げました。楽しかったです。

春が来れば「桔梗屋工場祭り」に向けて、またもや企画室は大忙しになるのだそう。
和菓子は季節を映す菓子。年中行事にも、桔梗屋は本気なようです。

推し色のお菓子を捧げたり、自分へのご褒美に奮発したり、
今日は、さまざまな形で「愛」を告白する日。
桔梗屋では、ハートの焼印が入った桔梗信玄餅どらを販売しています。

どら焼きとバレンタイン。
その組み合わせに、つい思いを馳せてしまう相手がいるのです。

数年前。ちょうどこんな風に、町じゅうが甘い匂いで包まれていた頃。
まさしく着物の帯のような水ぶくれにお腹全体を覆われ、
あと少しでも進行していたら危なかったとお医者さんに告げられていたわたしの祖父は、
いやあなかなかない人生経験をしたよと、笑いながら退院してきていたのでした。

甘いものに目がない彼は、
なかでもチョコレートをいっとう好んでいたのですが、
刺激のある可能性を考慮し、しばらく食べることを控えるようになりました。

そうこうしながらやってきたバレンタインデー当日。
例年よりずっと悩んだ末、
和菓子が体に優しそうでいいんじゃないかと、どら焼きの詰合せを手渡したところ、
いつもは穏やかに顔をほころばすだけの彼が涙を流し、
ありがとう、ありがとうと手を握ってきたのでうろたえました。
生きて、また甘いものが食べられている光景を見て、
わたしが食べることが大好きなのは彼ゆずりであったこと、
なにより、わたしが彼に愛されて育ってきたことをつよく思い返しました。

愛していると、ストレートに言葉にできてしまえる人が果たしてどれ程いるのでしょう。
表情の節々やふとした動作だったり、ときどきに訪れる行事の力を借りたりなんかして。

ただ喜ぶ顔が見たい。
願うとき、もう愛は満ち足りているのではないでしょうか。
ハートの焼印が入ったどら焼きがお役に立てますよう、ささやかながら思っています。

じつはこの桔梗信玄餅どら、オリジナル焼印のご注文も承ります。
世界にひとつだけの思いを込めて、しあわせなおやつ時間を贈ってみてはいかがでしょうか。
焼印の制作には1か月ほどお時間がかかるので、是非お気軽にご連絡くださいね。

おさだ